2017/07/12 00:23
宝塚歌劇団のショーを観たことがありますか?
僕は、一度だけあります。5年ほど前の話。星組だったか花組だったか雪組だったか空組だったと思います。
結論からいうと、とても面白かった。とにかく展開が速い。台詞もダンスもとにかく速い。考えているヒマなんかない、全部速い。特に、衣装替えとセット替 えの速さは、一見の価値あり。上手にハケたと思った人が、10秒後に下手から、衣装を替えて歌いながら出て来る。あっちに消えたと思った人が、客席のほう から踊りながら出て来たりする。彼女が舞台に着いたとき、あれ?セットがモスクワからペテルブルグに変わっている!!さっき踊っていた人が、こっちでも 踊っていて、こっちで歌っていた人があそこで歌っていて、ははぁん、「量子もつれ」を起こしておるな、と思っていたら、訓練をきちんと受けている彼女らは歌も踊りも容 姿もそっくりなので、良く見ると違う人物だったりする。とにかくアリンコの群れのように、みんな動きが速い。
演目はレフ・トルストイの「復活」でした。
原作はすごく長い物語。新潮文庫で1000ページほどある。ざっとしたあらすじはこんな感じ。
ハンサムな貴族、貴族だから当然金持ちなネフリュードフ公爵は、ある若く美しい下女・カチューシャをもて遊んで捨てる。よくある話ですな。僕と彼とは、 性格が真反対だな。カチューシャは、その後、娼婦にまで身を落としてしまって、ある殺人に関わる。その裁判の席に、たまたま陪審員としてネフリュードフ公 爵は参加する・・・・殺人罪でシベリアに送られた彼女をネフリュードフは追いかける・・・・シベリアで彼女と出会い、僕と性格が真反対な彼は、過去の罪を 改め、カチューシャと共に生きて行く決心をして、魂を「復活」させるという、なかなか高尚な話。
さて、宝塚歌劇団は、この物語を、ぐっっっっっっっっと、こんなにはしょって、魂の救済とか、ロシア正教とか、贖罪とか、面倒くさいことや難しいことは 一切語らず、恋愛のことのみに焦点をあて、私はまるでお菓子だった〜〜〜とか恐ろしく安っぽい唄で悲哀を示したり、シベリアに住む親切な農民がズーズー弁 で話したりする、強烈な軽薄さで笑いをとったりして、2時間のショーにしていた。
恐るべし。いや、楽しいのですよ。僕もちょっとだけ泣いたかもしれないし、終わった後に隣に座った見知らぬ女性と抱き合いたいと思ったかもしれない(大人だから、抱き合わなかったけれど)。ハマる人の気持ちは、よく分かった。
エンターテイメント。まぁ、僕の言葉でいうと、素晴らしい俗っぽさ。
終わった後、改めてその公演のポスターを見て、心の底から宝塚歌劇団のすごさを思い知ったのです。そこにはキャッチコピーとしてこう書いてあった。
「恋が死に、愛が『復活』する」
さて、明日です。
吉俣耕二「E=」第三夜、タイトルは「保存」。木村佐和子さんとお送りします。僕と佐和子さんのする公演にエンターテイメントを期待する人はいないと思いますが、いたら申し訳ありませんので、宝塚歌劇団風にテーマを発表します。
「あのときめきを『保存』する」
赤い月。イカロスの森で、20時ごろからのスタートになります。詳細は、下のフライヤーをご覧ください。
ご都合いかがで?